薬と歴史人物その3『高峰譲吉とアドレナリン』

アドレナリン注射液 アドレナリン注0.1% シリンジ 「テルモ」©テルモ株式会社
アドレナリン注射液 アドレナリン注0.1% シリンジ 「テルモ」©テルモ株式会社

こんにちは。

 

前回の「薬と歴史人物」第2回でご紹介したタカジアスターゼを創薬した高峰譲吉はもう一つの偉大な発見をしました。今や日常的な言葉にもなっている「アドレナリン」です。アドレナリンは救急場面などを中心として幅広く使用されており、急激な血圧低下や心停止、アナフィラキシーショック、敗血症における昇圧剤や、気管支喘息発作時の気管支拡張薬として医療の第一線で使用されています。

 

現在、日本で認可されている医療用医薬品は2万以上ありますが、漢方薬を除いて100年以上に亘って医療の第一線で使用されている医薬品は、「アドレナリン」「タカジアスターゼ」「アスピリン」の3つしかありません。このうちの二つが高峰譲吉が開発した医薬品であることは素晴らしいと思います。

 

アドレナリンは明治33年(1900年)に高峰譲吉と助手の上中敬三が牛の副腎から発見して、翌年の明治34年(1901年)には結晶化に成功しました。アドレナリンを巡っては「エピネフリン」と名付けた米国のエイベルなど他の研究者との発見争いがありましたが、エイベルの抽出法は再現性がなかったことと、上中の実験ノートによりアドレリンの発見は高峰らの研究であることが判明しています。ただし上記の争いの経緯から、米国で今でも「エピネフリン」、欧州では「アドレナリン」と呼ばれていることは興味深いですね。

 

                      (文:森本)

 

参考文献:

飯沼和正 菅野富夫「高峰譲吉の生涯―アドレナリン発見の真実」(朝日選書) 

朝日新聞社2000年